朝日小学生新聞で紹介されていた「ポケット版・『のび太』という生きかた」。
25万部突破との事で、小学生高学年あたりからも読まれている本です。
読んでみて、「なるほど」とその人気の理由に頷きました。
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「のび太」といえば、ご存知、国民的マンガ「ドラえもん」の主人公・野比のび太。
勉強もスポーツもダメ、ルックスもいまいち。
すぐにドラえもんに泣きつく印象が強い、およそ主人公というには規格外ともいえるキャラクターです。
この本は、そんなのび太の生き方について解説したもの。
負け組の代表格のようなイメージがありますが、実はのび太こそ勝ち組だというのです。
読む前までは「どうしてのび太が勝ち組?」といぶかしく思っていましたが、読んでみて「確かに勝ち組だ」と思える理由がたくさんあることを知ります。
見た目とは裏腹に、のび太は人生を上手に歩いている事を、著作者である富山大学名誉教授・横山泰行さんが、独自の解釈で解説しています。
筆者は「ドラえもんアナリスト」!?
筆者の横山泰行氏は、ドラえもんアナリスト。
ドラえもん学を研究されている教育学博士です。
ドラえもん学なんてあるんだとびっくりですが、富山大学で単位認定のない自由参加型ゼミ「ドラえもんの世界」を開講されています。
その内容は、ドラえもんに出てくる登場人物たちが、夢や悩みに対してどのように対応・解決していったのかを模索。
しかも、ドラえもんの誕生日である9月3日には、ホームページ「ドラえもん学コロキアム」を開設しているほどの入れ込みよう。
また、「『のび太』という生きかた」以外にも、「『のび太』が教えてくれたこと」「『スネ夫』という生きかた」なんて興味深い本もあります。
こちらも、機会があれば読みたい!
勝ち組狙うなら見習え?のび太メソッド
ドラえもん学では、吹き出しやひみつ道具、登場人物、事項索引などをデータベース化して、登場人物の行動やセリフを分析。
15年以上にわたり、年平均2,000時間、全作品を100回以上読んだというのですからすごい。
まさに、ドラえもん博士!
悪く言えば、ドラえもんのストーカー!?
最初はドラえもんに集点が当てられていたようですが、横山泰行氏が研究を進めていく中で、のび太が相乗以上に人生を上手に歩んでいることに気が付いたんだそう。
そんなのび太の成功をまとめたのが、「のび太メソッド」。
のび太がいかに勝ち組なのか、その理由と、そうなるにはどうしたらいいのかを37項目で解説しています。
ポイントを抜き出すと…
序章:もし、ドラえもんがいなかったら…
→ひみつ道具やドラえもんの力で、のび太は成長してきた
→ひみつ道具が、のび太の隠れた長所を引き出した
第1章:現実社会の縮図である「ドラえもん」の世界に学ぶ
ドラえもんの話の中で起きているトラブルは、現実社会でも起こっているもの。
のび太本人110作品、家庭76作品、学校56作品、恋愛44作品、遊び・運動34作品、金銭25作品。
子どもだけでなく、大人にとっても関係の深い話題やメッセージから読み取れることがあると解説しています。
この章の話を読んで、まだ人生経験の浅い子供に、コミックスも読ませたいと思ったところでした。
第2章:失敗があるからこそ、夢に近づくことができる
のび太が日々起こす失敗。
読者の失敗も同じ様なものだとして、のび太の行動から学べるところを取り上げています。
第3章:心の持ち方を変えてみることから始めよう
のび太が抱える問題も、読者が抱える問題も本質は同じ。
夢を叶える秘訣は心の持ち方にあると、夢を叶えているのび太の行動から解説しています。
のび太の優しが際立って感じられたところでした。
第4章:できる範囲での行動だけで、夢はかなり叶ってしまう
夢は行動しないと叶わない。
のび太ならではの、夢を叶える秘訣を解説。
第5章:叶う夢には、法則がある
ひみつ道具やドラえもんのサポートがあっても、行動しても叶わない夢もあります。
叶う夢と叶わない夢の違いを解説。
第6章:「のび太なり」の努力で十分
ただ努力するだけでなく、少し気を付けるポイントがある…のび太の行動から解説。
第7章:ドラえもんは、あなたにもいる
ドラえもんは誰にでもいる。
いくらでも見つけることができると解説。
それは一体、どういう人なのか?
第8章:最後はドラえもんがいなくなっても大丈夫
これは、コミック6巻の「さようなら、ドラえもん」からわかります。
のび太の成長を実感できるお話だなと思います。
どうしてここまで成長できたのか…それについて解説。
また、コミック32巻「しずちゃんさようなら」や「ドラえもんプラス5巻」の「45年後…」などの解説も心にじ~んときます。
「のび太=勝ち組」に納得
これを読むと、「確かにのび太は勝ち組!」と思えます!
それは、お金持ちになったとか、そういった成功による勝ち組じゃないです。
ドラえもんが貸しているヒミツ道具、これもただ単に甘やかしているわけではない事も目からうろこ。
見方が変わります。
国民的アニメとしてずーっと浸透している理由にも納得です。
「『のび太』という生きかた」を読んだら、原作のコミックスも読みたくなりました。
藤子・F・不二夫先生のストーリーへの真意なども読み取れて、ただの「面白いマンガ」から「意味あるマンガ」へと、大きく見方が変わった本でした。
花にも是非、読んでもらいたい。
小学生高学年の子が、読書感想文などに選ぶ理由も納得です。