ややこしくも愛おしいつながり…辻村深月「家族シアター」

中学入試でよく出題される辻村深月さん。
「家族シアター」を読みました。

表紙がかわいくて手に取ったのですが、中身もすばらしい。
ぐいぐい引っ張られました。

「どうなる、この家族!?」
「どういう結末に!?」

なんてハラハラ、ドキドキ。
子どもがいる親だからこその興味深さからすぐに読み終わってしまいました。
読み終わった後は、なんだかすっきりとしたさわやかさがありました。

この「家族シアター」は、7つの家族の短編集。
それぞれのお話で主人公の立場が違うので、同じ立場はもちろん、別目線から読めて新鮮です。

 

「家族シアター」はこんなお話

「家族シアター」は7本の短編集。
それぞれに主人公が違います。

「妹」という祝福

同じ中学校に通う、姉妹のお話。
姉の結婚式で、妹(主人公)が学生時代の姉との思い出を回想します。

まじめな姉とイケてる妹。
子どもの頃は仲が良いそっくり姉妹でしたが、やがて妹は姉とは違うと必死に自分を磨きます。

その甲斐あって、元は似ているのに姉妹とは思えないほど違うように。
口を開けば憎まれ口ばかり言ってしまう妹でしたが、ある出来事をきっかけに姉の本当の気持ちに気付きます。

 

サイリウム

バンドの追っかけに熱中する姉(23歳)と、アイドルオタクな弟(19歳、主人公)。

なにかと突っかかってくる姉。
それに耐える弟。
バンドファンVSアイドルファン。

耐え忍んでいたある日、姉の様子が変である事に気が付いた弟は、口ではそっけないものの陰であれこれと心配。

なんだかんだ言っていても、姉弟っていいなと思うお話。
また、アイドルファンの気持ちがちょっとわかるお話でもあり、見る目が変わりました。

 

私のディアマンテ

大学受験を控えた優等生の娘と、心配性な母(主人公)の話。

母親目線なので一番共感しやすいかと思いきや、私とはまったく正反対の性格と考えなので、こうした考えもあるんだなと考えるとこもあり、同じ母として興味深く読めました。

娘さんがずっと内緒にしていた話をぶちまけた後のお母さんの行動、そしてある重大な局面にぶち当たった時のお母さんの対応には、「すごいな、このお母さん」と心の中で拍手。

もしも自分もこうした状況になったら、このお母さんと同じことが言えるのか?

まったく可能性がないわけでもないので考えさせられたお話でした。

 




 

タイムカプセルの8年

教師に憧れる6年生の息子と、大学准教授の父親(主人公)のお話。

お父さんの子育てや学校行事などに対する気持ちに共感する部分があり。
私も、どっちかというと同じかな…?

でも、お母さんが怒るのも非常によくわかります。
そりゃ、怒られるわ。

でも、最後に起こした行動からは子どもを思いやる温かい気持ちが伝わってきました。
面倒そうに思えても、ちゃんと大事なところは考えているお父さん。

お互い考えは違うし、表立って言わないけれども、なんだかんだ言っても家族は家族なんだなと思ったお話。

 

1992年の秋空

宇宙を愛する妹と、自分の普通さがコンプレックスな姉(主人公)

宇宙飛行士になりたいと、普段から理系バリバリの思考力。
おねえちゃんはいたって普通の女の子なので、その差が際立ちます。
本物の理系の子ども(!?)の考えや行動とは、こうしたものなのかと感心させられました。

ある出来事をきっかけに姉妹の距離が近づき、妹の気持ちを知ります。
夢を追うもの、応援する者の暖かいお話です。

 

孫と誕生会

それまで海外にいた息子家族と一緒に暮らすことになったおじいちゃん(主人公)と、その孫。

いかにも田舎の昔気質なおじいちゃんのまっすぐで正直な性格や行動と、繊細な年齢(小学生)であり女子特有の悩みを抱える孫のやり取り。

小学生にありがちなトラブルなどには、おなじ女の子の親として読んでいてドキドキハラハラ。
ただ、こうした経験から強くなっていくのかなと、越えなければいけない壁を感じました。

おじいちゃんの「おじいちゃんは、あの子たちが嫌いだ」という言葉にホロリ。

 

タマシイム・マシンの永遠

藤子・F・不二雄を敬愛する若い夫婦(主人公)のお話。

タマシイム・マシン…初めて聞いた!?
ドラえもんのこの道具が、もう実現されているのではないかと。
「ああ、そうか…」と思うような解釈に、ちょっとジーンときました。

 

いろんな家族のお話が楽しめる「家族シアター」。

家族だからこその距離感の取り方の難しさや、甘えがあるからこその苛立ち、わがまま、反抗など。
どうしてもこれらの感情や行動が表立ってしまうけど、その根底には友人とは違う家族特有の温かさや愛情があり。

読み始めはハラハラするけど、おわりはほっこり。
家族は家族なんだと再確認できる本です。

 

入試で引っ張りだこ!?

以下の学校の入試で出題されています。

・2015年
甲陽学院中学校

・2016年
麻布中学校
名古屋女子大学中学校

・2017年
慶應義塾湘南藤沢中等部
洗足学園中学校

・2018年
高田中学校
開智未来中学校

・2019年
大妻嵐山中学校
頌栄女子学院中学校
昭和女子大学附属昭和中学校
広島学院中学校
六甲学院中学校

2015年からどこかしらの学校が入試に使っている本。
内容的にも、受験生の年齢的にも納得です。

また来年以降も使われるかな?

 

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